| シンニード・オコナーは、どうすればキャリアを終わらせることができるか実によく知っている。実際オコナーは、その実現に向けて90年代初頭から準備を進め、扇情的な行動に走ったり(人気テレビ番組『Saturday Night Live』出演中に法王ヨハネ・パウロ2世の写真を破り捨てた)、ことあるごとに引退宣言を繰り返したりしてきた。本作『She Who Dwells』のリリースは、世間への告知を兼ねている。オコナーの引退騒動も今度こそ最後であり、本作は音楽による遺言書である、ということだ。そして――何ともはや、オコナーが音楽業界に辞意を突きつけたのはこれが3度めである。今回の告知が事実ならば残念なことだ。なぜならオコナーは、10年近く音楽的な試行錯誤を重ねた末、2002年の『Sean-Nos Nua』(アイルランド民謡をざん新な視点でとらえ直したアルバム)で、自分の真の歌声を再発見したところだったのだから。 『She Who Dwells』(正式なタイトルはフィオナ・アップルも息を切らしそうなほど長い)はCD2枚組だが、オコナーらしく風変わりな構成となっている。ディスク1には19のレア・トラック、未発表トラックが集められ、まったく異なる3つのパートに分けられている。『Sean-Nos Nua』に続くアイルランドの伝統音楽、マッシヴ・アタックやエイジアン・ダヴ・ファウンデイションとコラボレートしたエレクトリック・チューン、そしてアレサ・フランクリン、グラム・パーソンズ、B-52’S、アバらがつくった(あるいは有名にした)曲のカヴァーという具合だ。(3つめの路線などは絶対にうまく行きそうにないが、そこは論より証拠、テックス・メックスのポップ・ヴァージョンといえそうな「Chiqutita」を聴いてみて頂きたい。) ディスク2はよりキャリアの終わりにふさわしいレトロスペクティヴだ。収録された13トラックは、2002年の後半にダブリンのヴァイカー・ストリート・シアターで行われたコンサートの記録である。『Sean-Nos Nua』からは7曲、『I Do Not Want What I Haven’t Got』と『Universal Mother』からは3曲ずつという選曲だ。オコナーを支える素晴らしいバンドにはドーナル・ラニー、シャロン・シャノンというアイルランド音楽の重鎮たちが参加。彼らの力量もさることながら、全編を圧倒するのはオコナーの歌声で、アイリッシュ・ブルース「I Am Stretched on Your Grave」も、フルートと堂々としたチェロをフィーチャーしたヴァージョンの「Nothing Compares to U」も見事に歌いこなしている。本作がオコナーの最後のアルバムにならないようにと願うのは人情というものだろう。しかし、たとえ最後のアルバムになったとしても、オコナーは純粋で崇高な音楽を置き土産に残してくれたことになる。(Keith Moerer, Amazon.com) |