| 『The X-Files Mythology』シリーズの第2巻となる本作『Black Oil』は、『X-ファイル』の中でもかなり不気味な要素のひとつであるブラック・オイルをテーマにしたエピソード・コレクション。ブラック・オイルは次々と宿主を変えるエイリアンであり、寄生した人間の眼球上にその姿を見せることもある。それにしても解せないのは、この巻の幕開けを飾るエピソードがブラック・オイルに関するものではなく、「二世(Nisei)」と「731(731)」という第3シーズン中の2部作であることだ。ストーリーは、第二次大戦後に日本人科学者の指揮下で行われたエイリアンと人間への人体実験、ハンセン病研究所で起こった大量虐殺、エイリアンによるスカリー誘拐、スカリーの姉の殺害、エイリアンと人間のハイブリッドかもしれない人物を乗せた貨車…といったトピックに、FBI捜査官のモルダー(デイビッド・ドゥカブニー)とスカリー(ジリアン・アンダーソン)が挑んでいくというもの。 この際だから言わせてもらうと、『X-ファイル』の初心者にとって、ブラック・オイルはあまり重要な要素ではない。実際、前述した冒頭のエピソード2つ(それに、その後に収録されている「メメント・モリ(Memento Mori)」、「MAX Part1(Tempus Fugit)」、「MAX Part2(Max)」などのエピソード)は、ブラック・オイルよりもアブダクション(エイリアンによる誘拐)に重点を置いており、本作よりも第1巻『Abduction』にこそふさわしい内容と言える。というわけで、『Mythology』シリーズの意図は、テーマ別にエピソードを集めることにではなく、『X-ファイル』の陰謀 / エイリアン系プロットをひととおり押さえ、番外編的なエピソード(いわゆる“クリーチャーもの”)を除外して、手頃な価格とスマートなパッケージングで提供することにあるのではないか。陰謀 / エイリアン系プロットは『X-ファイル』に幅広い人気をもたらしただけあって、実に取っ付きやすい面白さだ。今まで『X-ファイル』を未見だった人、あるいは秀作エピソードをピック・アップして新たな音声解説付きで見てみたいというカジュアルなファンにとって、『Mythology』シリーズはお買い得商品と言えるだろう。この『Black Oil』編は、4枚のディスクに計15エピソードを収録。期間にして第3シーズン後半から第5シーズン前半までをカバーしているが、これはシリーズの全盛期にあたる。注目すべきエピソードとして挙げられるのは、「タリサ・クミ(Talitha Cumi)」、「支配者(Herrenvolk)」、「ツングースカ Part1(Tenguska)」、「ゲッセマネ(Gethsemane)」、「帰還 Part1(Redux)」あたり。エイリアンのバウンティ・ハンター、モルダーの家族、スカリーの苦悩、ミスターXと呼ばれる正体不明の情報提供者、裏切り者の捜査官クライチェックについて、さらなる展開が見られる。だがマニアには、やはり各シーズンのコンプリート盤をおすすめしたい。本作から除外されたエピソード、たとえば「休息(Clyde Bruckman's Final Repose)」、「害虫(War of the Coprophages)」、「賭博(Hell Money)」、「執筆(Jose Chung's From Outer Space)」、「ホーム(Home)」、「紫煙(Musings of a Cigarette Smoking Man)」、「ペーパー・ハート(Paper Hearts)」なども捨てがたいからだ。中でも未収録が悔やまれるのは「腫瘍(Leonard Betts)」で、本筋からやや外れた内容ながら、重要な新展開を見せたエピソードだった。 新たなDVD特典は第1巻ほど多くなく、監督による3エピソードぶんの音声解説と、番組クリエイターのクリス・カーターによる新作ドキュメンタリー「Threads of Mythology」の第2弾のみ。(David Horiuchi, Amazon.com) |